顔面の深い挫創の被覆


「顔面,特に鼻や眼瞼周囲の深い挫創の閉鎖で困っています。傷が深いためにデュオアクティブだとすぐに溶けてしまうし,ソーブサンとフィルムにしてもすぐに液が漏れ出してしまいます。ハイドロサイトだと創面に密着せずに浮き上がってしまいます。ガーゼをあてて液漏れに対処していますが,何かいい方法はあるでしょうか?」

 このような質問をいただきました。同じような疑問をお持ちの方もいらっしゃると思いますので,ここで回答しておきます。


 解決法は極めて簡単です。患者さんに薄いハイドロコロイド(デュオアクティブETなど)を渡し,「これは傷の部分が次第に溶けてきて,それで治療効果を発揮する治療材料です。傷があれば必ず溶けてきますから,流れ出す前に剥して傷と一緒に顔を洗い,新しいものを貼ってくださいね」と説明するだけです。傷が深い場合は一日に3度でも4度でも取り替えてもらえばいいし,傷が治ってくれば一日1回の貼付で大丈夫になります。
 要するに,患者さんに交換の時期を判断してもらい,実行してもらえばいいだけのことです。


 ここで重要なのは「ハイドロコロイドは傷があると溶けるようになっている。解けるから傷にくっつかないので,剥す時に痛くない。しかも溶けたゲル状の液が傷を軟らかく覆ってくれるので,傷は速く治ります」ということを,十分に説明することです。

 要するに,患者さんにも治療に参加してもらうのですよ。患者さんにとって,顔の傷がきれいに治るかどうかは一大事です。だから治療原理と治療手段について理解できれば,治療に積極的に参加してくれるはずです。
 医者がすることは,治療原理について説明することと,治療に参加する手段(=ハイドロコロイド)を提供することです。

 たったこれだけで,患者さんは快適な「治療ライフ」を送れるようになるはずです。

(2003/04/07)

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