とびひ,水いぼ,帯状疱疹などの局所治療について


 外傷ではないが,皮膚科や小児科で行われている創傷治療も気になるところだ。具体的に言うと「とびひ」「水いぼ」「帯状疱疹」などの局所治療だ。例えば帯状疱疹の場合,創面を消毒してゲンタシン軟膏などを貼付しガーゼで覆うのが普通に行われている治療だろうし,水いぼを取った後(取るかどうかがまず問題だが・・・)も,何となく消毒してガーゼかカット絆創膏などを張るのが普通じゃないだろうか。

 これらも余りに日常的に行われているため,それ以外の処置法がある事にすら気がつかれていないと思う。これらについての私の考えを書いてみる。

 ただし,私自身はこれらの治療に携わる機会がないため治療の有用性を示すデータはなく,あくまでも頭で考えたものである事ははじめに断っておく。また,これらの疾患に被覆材を使用することの問題点についても,最後に言及する。


 言うまでもなく,外傷性皮膚欠損だろうと熱傷だろうと褥瘡だろうと,治療の基本は「傷を乾かさない,消毒しない」に尽きる。となると,水いぼを取った後も帯状疱疹の後も,あるいはとびひの創面も同じだろう。とびひだからといって「乾かして治す」という方法論はありえないはずだ。


 湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)をするのに最も問題がないのは,水いぼであり帯状疱疹などの水泡性疾患ではないかと思う。これらの水疱にウィルスがいるのかいないのか,といった問題については私は全く知識がないが(オイオイ),以前,知り合いの皮膚科医が帯状疱疹の水疱にポリウレタン(ハイドロサイト)を使ってみたところ,びっくりするほど速くきれいに治癒したと知らせてくれた。これ一例のみでうんぬんする愚は避けたいが,理論的に考えてガーゼよりは被覆材が治癒を促進させる事は当然といえる。

 水いぼについては,積極的に取るべきだ,取らないプールに入れないから取る,取る必要はない・・・というさまざまな意見があって,専門家の間でも結論が出ていないようだが,水いぼの摘出についてはスピール膏(ご存知,タコ・ウオノメ治療用のサリチル酸つき絆創膏)で軟らかくしてから取る方法があり,どうせ取るのであれば,痛みのないこのような方法を取るべきであろう。また当然,取った後は被覆材などで密封・閉鎖すれば,速く治るはずだ。


 問題はとびひ(伝染性膿痂疹)の局所治療。ご存知のように黄色ブドウ球菌(稀に連鎖球菌)によりおこる皮膚感染症である。なぜ子供に発生するのか,感染症が起こる根本的原因が何なのかという問題はあるが,創面にだけ目を向けると「感染がひどくなければ,創面の細菌数を少なくした後に閉鎖しておけば,治るんじゃないの」という気がする。つまり,炎症がひどい時期にはドレナージが効くようなドレッシングを行い,炎症が収まってきたら湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法),という方法だ。
 抗生剤を使うかどうかだが,抗生剤入り軟膏が効いているとはとても思えないし(たとえ効いていたとしても,すぐに耐性菌が出現するだろうな),それよりは全身投与(内服か点滴)した方がはるかに効果的と思われる。

 シャワーやお風呂もいいと思うし,むしろ痛がらない程度に創面を洗った方が細菌の絶対数を減らすのに有効だろう。

 実際に,「3週間,小児科に通院して抗生剤入り軟膏と消毒をするように。お風呂は入らないように」と説明を受け,全く良くならないという症例の相談を受けたことがある。この例に対し,「お風呂でよく洗おう。抗生剤入り軟膏は止めよう。消毒も中止。創面はポリウレタンで閉鎖」を試してもらったところ,2日後にきれいに治癒したという経験がある。

 もちろんこれも「一例報告」なので,普遍的なものかどうかは疑わしいが,少なくとも,それまでの小児科で行っていた治療よりは有効だったことは間違いないだろう。


 問題は,これらの疾患に被覆材を使いにくい事。特に水泡性疾患の場合は新たな病名をつけなければまずい。とびひの場合,真皮に及んだり,それより深くなる事もあるだろうから(・・・多分・・・),「外傷性皮膚欠損」という病名をつけてコメントを付加すれば,何とかなるような気がする(・・・自信ないけど・・・)
 もちろん,各種のフィルムドレッシングでも十分に効果はあるだろうから,これらで被覆するのももちろん効果的なはずだ。

(2002/10/15)

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