気切部は消毒すべきか?


 「気管切開部(気切部)のカニューレ交換の際の消毒の可否」についてのお問い合わせをいただきました。もちろん,私に言わせればこの消毒は全く無意味です。即刻止めるべきでしょう。

 なぜ,消毒を止めた方がいいかというと,消毒薬による皮膚炎を起こしている例が少なからずあるからだ。気切は通常,長期間に渡ってなされるため,消毒も当然,長い期間にわたって続けられる。このため,皮膚炎からビラン,皮膚潰瘍となっている例が少なくないのだ。

 しかも,潰瘍となると創面からはMRSAなどが検出される率が高くなる(抗生剤を使っていればほぼ必発ね)。となると医者,看護婦が大騒ぎし,やれ個室に隔離しろ,カルベニンとバンコマイシンだ,という騒動になる。しかも創面から細菌が検出されているので,より頻回に消毒が行われる。

 だが,こんな時は慌てずに消毒を止め,創面を洗ってみることだ。消毒薬による皮膚炎だったら,ものの見事に治ってしまう。何のことはない,消毒による「医源性潰瘍」だったわけである。


 さらに本質的な問題として,「気切部周囲の皮膚の消毒」という行為は感染予防という目的に対し全く意味がないのだ。これを科学的に論証しようと思うが,ちょっと長くなるため,章を改めることにする

(2002/01/24)

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