CVカテーテルづたいに細菌は進入できるのか?


 大体,CVカテーテルに沿って皮膚から細菌が入ることなんて,現実に起こりうることなのだろうか? 私の頭ではどう考えてもこれが理解できない。どう考えてみても無理な現象にしか思えない。。


 まず,CVカテーテルに沿って細菌が進入するとしたら,CVカテーテルと人体組織の間に隙間が必要(最低でも細菌1個が通れるくらいの)。この「隙間」って,人体において存在しうるのだろうか?

 形成外科はいろいろな組織を再建するのが仕事だが,「出っ張った物」と「凹んだ物」を作って,それを維持するのは想像以上に大変なのである。支えとなる骨や軟骨などの硬組織と一緒でなければ,せっかく作った「出っ張り」はすぐに平坦になってしまう。これは「凹んだ物」でも同じ。

 これは一般的にも,「ピアスの穴は使っていないとすぐに閉じてしまう」ことでも理解できるだろうと思う。要するに,たかだか直径1ミリもないトンネルだって,ピアスという支えが無ければすぐに塞がってしまうのだ。

 従って,CVカテーテル周囲に細菌が通れるだけの隙間があって,それが維持されるなんてお伽話にしか思えない。これが実際に人体を扱っている外科医の率直な感想。


 仮に百歩譲って,CVカテーテルの周囲に細菌が進入したとしよう。それでもその細菌が血管内に入るのは不可能である。

 CVカテーテルは太い静脈の壁を貫いて,静脈内部に入っている。そして静脈といえども,CVカテーテルを入れるのに使う血管は筋層だってかなり発達している。つまり,CVカテーテルに沿って進入してきた細菌が血管に入るためには,この分厚い血管壁を乗り越える必要がある。その「乗り越える」ルートとは,CVカテーテルが血管壁を貫いている部分の「CVカテーテルと血管壁の隙間」であるはずだ。通り道があるとすればここしかない。

 しかし,考えてみて欲しい。細菌が入り込むほどの隙間があったとしたら,細菌が入るより先に出血してくるんじゃないか? そういう「隙間」があって細菌が入り込もうとしても,血管内からあふれだす血液に押し戻されるのが関の山じゃないだろうか? 出血のスピードは通常,細菌の鞭毛運動による移動スピードをはるかに凌駕しているのだ。一体どうやって入り込むというのだろうか?
 いわばそれは,「メダカが華厳の滝を昇り」「台風の中をトンボが風上に向かって飛ぶ」ような現象である。


 CVカテーテルを入れた時に血腫を作るのは「刺入時」だけであり,刺入直後に血腫を作らなければ,その後血腫を作ることは極めて稀だ(出血傾向があれば別だが・・・)
 つまり,通常の場合,CVカテーテルと血管壁の間は「水も漏らさぬ」状態になっていると考えられる。なぜかというと,CVカテーテルが突き刺さった瞬間,血管壁の筋層が収縮し,血液が外に漏れ出さないようにぴったりと締め付けているからだ。現実に血液が漏れ出していないのに,どうやって細菌が進入できるのだろうか?

 「CVカテーテルに沿って細菌が進入し,血管の中に入って感染する」という一般的なイメージがあるが,体内でそれが起こる様子を思い浮かべてみると,それはもう,偶然に偶然が重なるような幸運(?)でもなければ起こり得ないものだと思うし,極めて非現実的だ。特にどう考えても,血管壁を乗り越えて細菌が血管内に進入するという現象は,実現不可能だと思う。

 もちろん,「CVカテーテルの周囲に巨大膿瘍を作り,感染が静脈に及び,血管が破綻して出血し,その結果敗血症になった」・・・という症例はあるかもしれないが,これはかなり極端な場合だろう。日常的にお目にかかる症例ではないはずだ。

(2001/11/08)

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