新鮮外傷と創傷被覆材


 創傷被覆材は一般に褥瘡の処置に使われているし,販売しているメーカーも褥瘡への使用を第一選択として宣伝・販売しているようだ。
 しかし,実は私が提唱している「新鮮外傷での使用」が最も効果的なのである。


 まず,褥瘡と新鮮外傷に創傷被覆材を使用する場合,新鮮外傷が有利な点を列挙してみる。

  1. 非常に速やかな治癒が得られる。
  2. ケロイドや肥厚性瘢痕の発生が少ない。
  3. 創面に固着しないため,創処置時の疼痛が無い。
  4. 創傷被覆材の連続使用には「2週間の壁」があるが,褥瘡は2週間では治癒しない。しかし,ほとんどの新鮮外傷は2週間以内に治癒可能であり,保険請求で頭を痛める必要が無い。
 これらが利点だろう。


 一方,被覆材の製造・販売をしているメーカーにとっても実は大きなメリットがある。

  1. 患者の数は,褥瘡と新鮮外傷(挫傷,擦過傷など)では圧倒的に後者が多い。つまり,新鮮外傷に使ってもらえたら,売上はかなり増える。
  2. 新鮮外傷は2週間でほとんど治癒するため,医者に薦めやすい。


 現在,多くの被覆材のメーカーは褥瘡を念頭にそれぞれの商品を売っている。もちろん,高齢化社会をにらんでの戦略だろうと思うが,その様子はさながら,褥瘡というパイをめぐっての取りあいのように見える。
 しかし,擦過傷を含む新鮮外傷と褥瘡では,患者の数は段違いである。パイの大きさが全く違っている。なぜ,もっと大きなパイを相手に商売しないのか,不思議な気さえする。

 しかも,新鮮外傷の場合,患者は大抵「怪我をするほど元気」であり,ほとんどは健康人だ。そのため,正しく被覆材を使いさえすれば「傷が治るのが目に見える」ほど速く,治癒する。
 逆に褥瘡患者の多くは基礎疾患を持っていたり,高齢者だったりするわけで,よほど浅い褥瘡でもない限り,2週間で治癒する症例はまれだ。
 つまり,被覆材を使う医療者側にとっても,新鮮外傷のほうが「使った甲斐がある」のだ。


 「創傷被覆材は褥瘡に使うもの」と思いこんでおられる医者・看護婦の方々も少なくないと思うが,新鮮外傷に使ってみると,本当に感動するほどの治療効果が得られるのである。
 日々の診療で感動することが無くなったなぁ,とお感じの医療関係者の皆様,是非,新鮮外傷にこれらの被覆材を使ってみてください。そうすれば久々に新鮮な感動を味わうことができます。

(2001/11/01)

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