激しい接触性皮膚炎に対する湿潤療法の効果(投稿)

猿島赤十字病院 外科 瑞木 亨


 非常に浸出液の多い接触性皮膚炎症例をラップだけで治療したという報告をいただきました。


 症例は60歳男性。主訴:右下腿の腫脹と掻痒感。
 初診時(写真1)の状態を示すが,右下腿全体が発赤腫脹し,著しい浸出液があり,一部で糜爛を形成し,一見して蜂窩織炎のような印象だった。
 浸出液は極めて多く,まるでサウナに入っているように,みるみる浸出液が玉のように浮き出る状態であった。

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 直ちに皮膚科医にコンサルトしたが,接触性皮膚炎という診断で,アクリノール湿布の指示があった。しかし,日増しに浸出液は多くなり,自宅での処置が困難なため入院となった。
 ちなみに,半月前から市販のメンソレータムなどの軟膏やクリームを塗りまくった挙句,現在の状態になったということであった。

 血液データでは白血球増多が軽度見られる程度で,好酸球増多はなく,CRPもそれほど高くなかった。糖尿病の合併もなかった。


 足首からどんどん広がったという患者さんの言葉から伝染性膿痂疹のような病態が考えられたが,皮膚科式に抗生剤の全身投与をしながら〔亜鉛華軟膏+リント布〕で覆う方法では,創面を乾燥させてしまい,さらに状態が悪化するのではないかと考えられた。

 そこで,「広範な皮膚の炎症はすなわち熱傷に準じたものと考えてよいのではないか」,と外科的に都合のよいように判断し,ひたすら洗浄のうえで〔ワセリン+ラップ〕という対処を選択した。既に当院では褥瘡は湿潤療法となっていたため,看護師も治療方針を理解し,協力してくれた。

 爪白癬あり,左足には小水疱型白癬と思われる局面もあり,抗真菌剤内服(ラミシール)と抗生剤(セファメジン)点滴も併用した。


 当初は1日に2回の処置を行ったが,2,3日間は状態に変化はなく,次第に不安がつのってきたが,その後から急速に浸出液が減少し,一週間後には、糜爛状に赤むけていた皮膚がすべて上皮化した(写真2)。
 5日後くらいから体幹に薬疹と思われる発疹が出現したため,薬剤は全て中止したが,治癒速度には影響しなかった。

初期の局所培養からはMRSAが検出されたが,colonizationと考え、深追いせず,特に対処もしなかった。結局,MRSAによる創感染は起きなかった。


 以上が,瑞木先生からお寄せいただいた症例の経過である。文体の一部を変えさせていただいた。コンサルトした皮膚科専門医の言うとおりに,アクリノール湿布を続けたり,〔亜鉛華軟膏+リント布〕をしていたらどうなっていたのだろうか,と思う。

 こういう症例を出すと必ずといっていいほど,「1例で何が言える。100例揃えないと駄目だ」なんてトンチキなことを言い出す連中がいる。こういう連中は1例を真面目に見たことがない(治療したことがない)のだろうと思う。1例の怖さ,1例の素晴らしさを知らないから,100例なんていう根拠のない数字を持ち出すのだろう。

 たまたまこの症例はうまくいっただけかもしれない。しかし,たった1例だって,治せないよりは治せた方がいい。

(2004/09/08)

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