易感染性患者と消毒


 白血球減少症,あるいはステロイドで治療中の易感染性患者では細菌の侵入が重篤な感染を起こす。これはまぎれもない事実である。しかし「細菌の侵入は防がなくてはいけない→消毒しよう」と短絡的に考えてはいけない。


  1. 消毒薬に組織障害性があること
  2. 正常皮膚に対し接触性皮膚炎を起こすこと
  3. 皮膚(創面)は消毒によって無菌にできないこ
 これらは易感染性患者であっても健康人であっても共通する普遍的事実である。
 従って易感染性患者のカテーテル挿入後に刺入部を消毒しても感染予防にはならないし,かえって刺入部の皮膚を傷害して皮膚潰瘍を作った場合,結果的に感染を起こし易くなることになるのである。もちろんこれは,「絶対に感染予防しよう」と繰り返し繰り返し,熱心に消毒すればするほど,感染しやすい下地を作ることになるのだ。
 すなわち,易感染性患者にとって,カテーテル刺入部の消毒は感染予防にとって逆効果であると結論付けられる。

 これはカテーテル処置に限らず,全ての消毒がらみの処置に共通している事実であり,安易な消毒がかえって感染しやすい状態をもたらす可能性があることを銘記すべきであろう。


 無菌の組織に通じている人工物があって,それが皮膚(=細菌が常在している)を貫いている場合,その人工物による感染を完全に防ぐ方法はありえないと思う。これはどんなに強固で完璧な防犯システムを備えている建物でも,侵入者を未来永劫に防ぐことができないのと同じことである。この例に当てはめると消毒とは「防犯システム」の破壊活動にほかならないのである。

(2003/10/16)

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