皮膚科治療の常識・非常識?


 このように考えていくと、水虫発症の発端は皮膚での白癬菌の増加か、皮膚に傷ができることか、という問題があることに気がつく。別の言い方をすれば、「傷のない皮膚で白癬菌は増殖できるのか?」という問題だ。


 前述のように、傷のない健常な角質は白癬菌にとってはベストの環境ではないし、むしろ生きやすい環境ではないはずだ。

 しかし、角傷に傷ができると状況は一変する。水分(=浸出液)は得られるし、創面は空中に露出するため酸素もある。しかも傷口には豊富なケラチンが露出している。つまり、「角質の傷=白癬菌のエデンの園」ではないだろうか。


 では、白癬菌の増殖が先か、皮膚の傷が先かと、どちらだろうか。多分、答えは後者だろう。角質の傷さえあれば白癬菌は容易に増殖できるが、角質に傷がなければ増殖しにくいからできないからだ。しつこいようだが、もしも角質が白癬菌にとってベストの環境なら、白癬菌が皮膚常在菌の優勢種になっているはずだからだ。

 となると、白癬菌発症の「原因」は白癬菌の有無ではなく、角質の傷の有無ではないだろうか。つまり、「原因と結果」で言えば、「角質の傷」が原因、「水虫発症」は結果であり、その逆はあり得ないはずだ。つまり、まず最初に「皮膚の傷(=エデンの園)」が生じ、その「エデンの園」で白癬菌が活発に増殖し、その後「水虫」が発症する、というシナリオしか考えられないのである。

 別の言い方をすると、皮膚に傷ができるという「環境の変化」がまず起こり、その変化して生じた環境でもっとも活発に増殖できる生命体が生き残る、となる。つまり、生命体(=この場合は白癬菌)は環境(=皮膚の物理的、化学的環境)が選ぶのだ。環境が変化したから生態系が変化し、従来とは違う生物が優勢種となっただけのことだ。


 これが私の考える「白癬菌仮説」である。

(2011/11/14)

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