37歳女性。
 2012年5月20日,〇〇病院外科で右乳がん根治術を受けた。その後の詳しい経過や治療については不明で,同院外科にも通院はしていない。
 8月下旬ころから手術部位に潰瘍が発生し,自宅で傷の処置をしていたようだ。ネットで調べて当科を受診した。初診時の説明では「患部の冷えがあり,温湿布を貼っていたら傷になって治らなくなった。ヤケドだと思う」ということであった。
 患者さんの説明に疑問を感じるところもあったが,とりあえず,皮膚潰瘍の治療ということで「穴あきポリ袋+紙おむつ」による治療(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)について説明し,処置方法を指導。週に1度通院してもらうこととし,11月からは2週に1度の通院とした。
 11月ころから皮下の硬結が明らかになり,乳がんの局所再発であったことは明らかだったため,当院外科に紹介しようとしたが,今の治療だけでいいですからと拒否。

 12月初め,「実は最初からがんの再発でしたが,外科に行くと抗癌剤の治療になるのがわかっていて行きたくないのです。実は糖質制限をしてみたいので,やり方を教えて下さい。いろいろな治療法を自分で調べましたが,家族と話し合い,もう間に合わないかもしれませんが糖質制限をしてみようと決心しました」との申し出があり,この日からスーパー糖質制限開始。
 1週間後に来てもらったが,顔色が非常に良くなり,何よりイキイキとして全体から受ける印象がとても明るくなった。本人も「すごく体調が良くて,夫が風邪をひいたのに自分に伝染らなかった。なんだか頭のなかの雲が晴れてスッキリと晴れ渡った気分です」と喜んでいた。しかし,局所の腫瘤は拡大し,潰瘍も拡大していた。
 せめてCTでも撮っておこうかとも考えたが,患者さんが「検査のための検査でしたらしなくていいです。CTを撮影したらがんが治るわけでもないでしょうから」ということで拒否。

 2013年1月ころからドレッシング交換の祭に出血するようになり,当初はアルギン酸塩被覆材で対処していたが,ちょうどその頃,瑞光メディカルが開発を進めていたヘモスタパッド(R)(アルギン酸塩被覆材付きプラスモイスト)のプロトタイプが完成したことから,患者さん同意の上で使用開始。抜群の止血能力を発揮し,どんな出血も自宅でコントロールできるようになった。また,瑞光メディカルに事情を説明したところ,「お役に立てるなら」ということで患者さんの自宅に大量のヘモスタパッドを無料で送っていただいた。「少なくとも,出血が止まらなくて入院,ということだけは避けられそうです」と,患者さんも喜んでおられた。

 2月に入った頃から背部の痛みが訴えるようになり,次第に呼吸苦も出現。2月下旬に近くの外科医院を受診し,「肺に水が溜まっているため,呼吸が苦しいのでしょう」と言われた。3月8日,胸水を抜くために△△病院外科入院。入院時の検査で多発骨転移が確認された。その後,放射線治療も開始。

 6月某日。永眠。
 ご主人から入院後の経過を詳細に綴ったメールを頂いた。

2012年10月19日 11月21日
12月21日 2013年2月20日
ヘモスタパッドで止血


【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/478/index.htm】

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