74歳女性。
 強皮症で〇〇大学△△病院血液膠原病内科で治療中。
 2013年1月に左足に潰瘍ができた。直ちに同院皮膚科を紹介され,ゲーベンクリームでの治療となり,同科医師から患部をせっけんでよく洗うように指導された。しかし,治療のたびに傷が深くなって潰瘍はどんどん拡大。ゲーベン塗布後の痛みがひどく歩けなくなったため,皮膚科医に「この軟は止めて欲しい」と再三申し入れたが,皮膚科医は聞く耳持たずでゲーベンの処方を続けた。
 家族が湿潤治療のことを知り,血液膠原病内科の主治医に当科を紹介してもらい,5月8日に受診。
 当科では創部を水道水で洗い,穴あきポリ袋+紙おむつ(鳥谷部先生のサイトに勝手にリンク)で覆う方法を指導した。翌日再受診していただいたが,痛みがなくなって久しぶりに熟睡できたと喜んでおられた。
 7月になり,通院が大変なため,近くのクリニックに紹介状を書き,そちらに通院してもらうこととした。

5月8日 5月21日
6月18日 7月2日


 この例のように数ヶ月間,ゲーベンクリームを使われていると潰瘍底は瘢痕化し,循環は極めて不良である。以前,同様症例の潰瘍底の瘢痕を切開してみたことがあったが,暑さ1センチの硬い瘢痕が覆っていて,瘢痕は切っても出血しなかった。このような瘢痕で覆われた潰瘍底表面は血流が極めて乏しいから,まず絶対に治らないだろうな,という印象である。
 この患者さんの場合は,「傷は治らなくてもいいから,とにかく痛みだけ何とかして欲しい」というのだ希望だったため,その希望に応えることはできたと思う。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/342/index.htm】

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