64歳女性。大阪在住。
 糖尿病性腎不全で人工透析中。
 右上腕にシャントを作っているが,たびたび狭窄を起こすため,2012年10月26日にステントを留置術施行。その後に,次第に右手指に壊死を生じた。人工血管内シャントによる Steal syndrome と診断し,12月25日に動脈絞扼術を施行。これにより循環は改善したが手指の壊死は進行した。
 主治医より手首での切断が必要と言われ,ネットで調べて当科を2月1日に受診した。
 初診時,示指〜小指の虚血性壊死を認め,痛みが酷かった。

 当科では,

  1. 乾燥を防いでおけば壊死した部分が生きている部分から離れ,自然に離断する
  2. 自然離断までには数ヶ月を要する
  3. その間に感染を起こすことは滅多にない。
  4. 従って,手首で切断する必要はない。
  5. 痛みの原因は乾燥と思われる
 
 と説明し,「穴あきポリ袋+紙おむつ」で右手全体を覆った。大阪市内で湿潤治療をしている先生の中で,整形外科の知識が豊富ということで,こおりた ひろ整形形成外科クリニックの郡田先生に紹介した。

 2月4日に郡田先生のクリニックを受診したが,痛みはなくなったと非常に喜んでおられたそうだ。
 以後,同院に4月22日まで通院していたが,5月7日に転倒し,左肩と右足関節骨折の診断で〇〇病院整形外科に入院となり,それ以降は受診していない。

2月1日 2月1日

2月4日 2月4日

3月4日 3月4日

4月8日 4月8日

4月22日 4月22日


 この症例のような虚血性指壊死は数例経験しているが,いずれも「自然離檀するまで乾燥を防ぐ」方式でうまく行っている。治療経過に感染を起こした例もない。
 多くの場合,離断面は関節軟骨となるが,創縁(肉芽面)から突出していなければ様子を見ていくと,関節軟骨も肉芽で覆われることを観察している。突出している場合,肉芽から飛び出した骨を残して上皮化するので,この段階になってから突出している骨だけを削ればいい(通常は無麻酔でも痛くなく削ることができる)

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/245/index.htm】

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