4歳9ヶ月女。
 2015年12月14日夕方,外で遊んでいて転倒,顎を切った。〇〇大学付属△△病院ERを受診したが,大暴れして治療ができず,何もせずに帰された。帰宅後,父親がネットで怪我の治療について検索。
 12月15日,当科受診。子どもは泣きながら外来に入ってきたが,いきなりこのおもちゃを潰してみせると泣き止み,もう一度やって,とのこと。次にいきなり,こっちのおもちゃを床に落として見せるとオオウケ! 手渡すともう夢中! それから,患者さん(4才児)本人に名前と年齢を尋ね,どこを怪我したかを聞き,見せて欲しいので見せて下さい,というと素直に見せてくれた。
 その上で,絶対に痛くないよ,と約束してからハイドロコロイド被覆材で創部を被覆。
 それが終わってからようやく父親に治療について説明し(ちなみに,それまで父親とは一切話をしていない),治療終了

12月15日 12月17日

12月22日 12月28日


 泣いて暴れている子どもを治療するのは不可能です。とにかく落ち着かせることが最優先ですが,もちろん,説得は通じません。だから,いきなり子どもの度肝を抜くオモチャを見せます。度肝を抜かれると,子どもは泣くのを忘れちゃうんですね。「これはすごいものを見ちゃった。泣いている場合じゃない」と子供心に判断します。
 そして次は「僕は君と一緒に遊びたいんだけど,遊んでくれるかな?」というメッセージを出し,同時に「僕は君の敵じゃない」と投げかけます。そしてさらに一緒に遊びます。
 これまでに要する時間は30秒から1分くらい。後は「友達として教えてほしいんだけど,どこを怪我したの?」と聞くと,2歳児でも3歳児でもきちんと教えてくれるし,「傷を見せて,お願い!」とお願いすると,「いいよ」と答えてくれます。大人が真剣な態度でお願いしているのがわかるんでしょうし,自分で「いいよ」といった手前,ちょっと痛くても頑張っちゃうんですね。
 ここまでくれば後は楽勝。その後の処置は極めてスムーズで手間もかかりません。頑張ってね,とお願いすれば頑張ってくれるし,動かないでね,とお願いすれば動きません。子どもは健気なほど頑張ります。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/2007/index.htm】

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