50歳男。東京都日野市。
 2009年に健康診断で糖尿病を指摘されたが放置。
 2014年5月初めころ,突然右第1趾が黒くなり近くのクリニックを受診。〇〇病院内科に紹介され,糖尿病性壊疽と診断され,△△大学付属病院形成外科に紹介され,直ちに入院となり,5月14日に第1,第2趾の切断術を受けた。1ヶ月間,入院して退院したが,傷が開いたままだった。8月1日に同科に再入院し,1週間入院して治療を受けたが,創の状態は変化なし。12月中旬に再受診した際,年明けに入院して追加切断(場合によっては下腿切断)して皮膚移植が必要と言われた。
 △△大学付属病院形成外科の最初の入院の際,知人が「この本によると炭水化物を食べなければ糖尿病は簡単に治る,と書いてある」と『炭水化物が人類を滅ぼす』を手渡してくれた。退院後に糖質制限を開始し,1週間で血糖値(入院時は400mg/dl以上)は120mg/dlに,HbA1cも12台から6台に低下した。主治医は首を傾げていたが,糖質制限していると説明すると面倒になると思い(患者さんは知的水準が非常に高い人です),薬だけ減量してもらい,現在はインスリンも内服薬も使用していない。
 2014年12月25日,当科受診。右足底内側と外側に厚い角質形成を伴った潰瘍があり,内側の潰瘍の中心部は深く陥没してポケット上になり,骨が直接触れた。発赤などの炎症所見はなかった。
 創部は「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)で被覆し,1週間に1度の割合で通院してもらうこととし,厚い角質を切除して角質の下の潰瘍面を開放創とし,デブリに伴う出血はヘモスタパッド貼付でコントロールした。
 2015年4月ころから,ポケットの中の骨が表面に顔を出すようになり(周囲の組織が引き締まってきたためと思われる),露出した骨を骨鉗子で切除した。これを何度か繰り返し,6月18日に腐骨が自然に排出され,その後,この部分の傷は自然に閉じてきた。

2014年12月25日 全体像 レントゲン

2015年1月6日 1月14日 1月21日:デブリ後

1月28日:デブリ前 デブリ後 ヘモスタパッドで止血

2月10日(47日後) 2月25日(62日後) 3月18日(83日後) 4月1日(97日後)

4月15日(111日後) 4月30日(126日後)

  
6月18日(175日後) 腐骨除去    7月14日(201日後)

 ここまでは順調に経過したが,7月下旬より右足が腫れてきて39℃台の発熱が続いたため,8月3日に当科を受診。その日の朝,突然右第3趾先端が黒くなったとのことで,足底の潰瘍も拡大して深くなり,第3中足骨と思われる骨が創内に露出していた。
 下肢動脈の急速閉塞を疑い,心臓血管外科に紹介し,直ちに入院となった。精査の結果,動脈閉塞はなく,下肢の循環は良好であった。同時に内科にも診てもらったが,高度の貧血と腎機能障害が認められた。精査の結果,腎機能障害による貧血の診断であり治療開始。
 レントゲン写真で第3中足骨と基節骨に骨融解像を認めたため,足底の創から露出している腐骨を骨鉗子やコッヘル鉗子で摘んでは取る作業を続けた(8月11日,8月13日,8月14日,8月17日に腐骨除去を行った)。その結果,足底の創は次第に肉芽で埋まるようになり,血液検査の値も正常になったため,8月26日に退院となった。
 9月10日に足底の瘻孔は全て閉鎖した。同時に,第1趾切断端の不安定な角質も次第に安定化し,正常な皮膚に置換される面積が増えてきたようだった。

8月3日
足底:骨が露出
第3趾 XP  

8月11日 8月13日 8月14日 8月17日:235日後

8月17日 8月21日 8月24日 9月3日:252日後

9月10日:259日後 10月2日:282日後 10月16日:295日後 10月30日:309日後

  
11月6日:316日後    11月13日:323日後 デブリードマン後

 
11月20日:330日後 デブリ後   12月4日:344日後


【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/1376/index.htm】

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