54歳男。
　11月24日夜，風呂の温度設定を間違って熱いお湯を入れ，風呂に入ろうとして左足に熱傷受傷。一晩冷やした後，翌日，〇〇泌尿器科・皮膚科を受診し，当科紹介となり，同日，当科受診。
　左下腿〜左足背全体の水疱形成があり，水疱膜を除去した後，食品包装用ラップで被覆し，その上を吸収シートで覆った。
　11月28日に一日立ち仕事をしたが，その夜から痛みが出てきた。足背全体に腫脹が認められたため，抗生剤を処方し，患肢挙上して安静にするように指導。2日で痛みは消退した。

11月25日	ドレッシング	11月26日	12月1日	12月4日	12月11日

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　湿潤治療は痛みがほとんどないため，もう治っていると勘違いして歩きまわったり，立ち仕事をしてしまう人がいるが，ほとんどの場合，翌日，痛みと腫脹，場合よっては発熱で受診されることになる。「痛くなくても治っているわけではない」と教える必要があるかもしれない。

　なぜ，患肢が腫れるかというと，動脈は骨に近い深部を走るので熱傷で損傷を受けないが，静脈は皮膚直下を走り，熱傷によって損傷を受けているからだ。つまり，入る道路は普通なのに，出る道路が狭くなっているのと同じだ。つまり，なにか起こればすぐに渋滞が発生し，これが腫脹である。とりわけ下肢は重力の影響を受けるので，より渋滞が起こりやすいわけだ。
　そして，腫脹すると感染を起こしやすくなる。「流れる水は腐らないが，澱んでいる水は腐る」の原則だ。