53歳男性。
 10年ほど前に高所より落下して脳出血を起こし,それ以降,半身不随となる。
 5月26日,ライターにガスを入れようとして衣服に引火し,左大腿外側に熱傷受傷。〇〇大学◇◇病院に救急搬送された。5月28日,同院形成外科を受診し,ただちに手術が必要なので入院するように言われた。荷物をとりに帰宅した際,以前,湿潤治療についての新聞記事を読んだことを思い出し,ネットで調べて直ちに当科を受診。初診時,直径20センチの3度熱傷を認めた。
 当科では,完治までに1年以上を要するが皮膚移植は必要ないこと,頻回の通院も不要であることを説明し,同意の上で「穴あき降り袋+紙おむつ」で創部を被覆し,治療材料の作り方と使い方を指導した。

2012年5月28日
ゲーベンクリーム(R)が塗布されていた
  5月31日
6月8日 6月19日 7月20日
8月21日 9月21日 10月19日
11月20日 12月21日 2013年1月25日
3月1日 4月23日 8月6日
11月12日 2014年1月21日
1センチほどの潰瘍はあるが
とりあえず通院は終了


 1年8ヶ月をかけた治療例である。こういうのを見ると,形成外科の先生方は「さっさと植皮すれば2週間で治るのに,1年8ヶ月かけて治すなんてバカか?」と考えると思うが,この患者さんは「入院はしたくない,手術はしたくない,植皮なんてされたくない。手術しなくていいのなら1年でも2年でも通院します」という希望だったので,これでいいのである。

 このような巨大な皮膚欠損創がどのように上皮化していくのか,克明なデータを得ることができ,この患者さんには感謝感激である。
 このような円形に近い皮膚欠損では,全方向から均等に肉芽収縮が起こるのでないことがよくわかる。