2歳10ヶ月男児。千葉県在住。
2月7日,テーブルの上の鍋をひっくり返し,胸腹部,左上腕・前腕などに熱傷受傷。直ちに〇〇大学△△病院に救急搬送され,救急診療科に入院となった。治療はアズノールとメロリンガーゼだった。入院中に両親がネットで熱傷治療について調べ,受傷から2週間後に当科を受診した。
当科では創傷治癒のメカニズムと湿潤治療の原理について説明し,同時に,この程度の熱傷では入院の必要はないことを説明。自宅から通える湿潤治療をしているクリニックに外来通院してもらい,当科には時々来てもらうこととした。創面の被覆は穴あきポリ袋+紙おむつ(R)で行った。
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2月20日 | 2月20日 | 3月18日 |
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3月28日 |
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5月2日 | 5月2日 上腕 |
5月2日 前腕 |
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7月8日 | 7月8日 上腕 |
7月8日 前腕 |
〇〇大学△△病院で治療に使ってメロリンガーゼであるが,ここでも説明したように,私が医者になる前からある古い治療材料で,「乾燥させて治す」時代の遺物である。傷にくっつかないという謳い文句だが,しっかりとくっつき,剥がす際にはかなり痛い。熱傷の治療材料では乾燥豚皮よりさらに古く,4世代か5世代前である。
この症例と見比べると,熱傷治療は最初にどの病院に行ったかで運命が分かれるよく分かると思う。片方は跡形なく治り,もう片方は肥厚性瘢痕と瘢痕拘縮が残っている。後者の治療を熱傷専門医は「標準治療」と呼んでいる。