55歳女性。
 髄膜瘤で都内の●●病院脳外科で3度開頭手術を受けた(最後の手術は3年前の11月)。最後の手術の翌年,胴部に放射線治療を受けたが,その頃から手術の傷が開き,頭蓋骨の一部が露出した。主治医(脳外科)は2回縫合を行ったが,いずれも術後に傷が開き,傷が治らなかった。現在はアクトシン軟膏を処方されているが,頭蓋骨は露出した状態。
 昨年,テレビで湿潤治療を取り上げていたことを思い出し,ネットで検索して当科を受診した。

 前頭部に直径1センチの皮膚全層欠損を認め,頭蓋骨が露出している。この部分の頭蓋骨は骨膜を欠損していて,表面は乾燥していた。
 当科では湿潤治療の原理と創感染が起こるメカニズムを説明し,さらに,同様に「骨が長期間露出して治らないが,感染も起こさない」症例を数怜経験していることを説明した。骨膜が欠損しているため恐らく自然治癒はないが,骨表面の乾燥を防いでおけば感染することもないだろうという予測を伝えた。
 患者さん同意の上で,ワセリンを塗布したラップ(3センチ四方)で骨を覆って乾燥を防ぐ方法を指導した。以後は1〜2ヶ月に一度通院していただいた。

2012年9月27日
画面下が前額部
10月4日 10月11日

10月26日 12月12日 2013年2月13日:239日後

2013年8月5日:312日後 2014年9月16日:719日後

2015年11月4日:1133日後 ワセリンを塗ったラップで覆うだけ

 私はこれまで,「骨が露出している=骨髄炎」と診断している整形外科医は掃いて捨てるほど見てきたし,「骨が露出している=感染して敗血症になる」と大騒ぎする医者も履いて捨てるほど見てきました。
 しかし,骨露出は骨髄炎とは無関係だし,感染症を起こすわけでもありません。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0096/index.htm】