85歳女性。
 2011年12月に右下腿をすりむいたらしい。自宅近くの〇〇病院に通院したが治らず,2012年1月から▼▼病院皮膚科に通院。ゲーベンクリームでの治療となった。それでも治癒せず,5月17日に◆◆総合病院皮膚科に通院。ここでも治療はゲーベンクリームだった。
 それでも治らないため,★☆病院外科に入院となった。そこでは軟膏をすべて止め,「穴あきポリ袋+紙おむつ」での処置となり,状態が改善し退院となった。それ以降は当科に時々通院してもらっていた。

 2012年9月はじめから急に食事がとれなくなり,元気もなくなってきた。同時に右足の先端も黒くなってきた。9月6日に受診。ASOの急性増悪であることを家族に告げたが,家族は手術などの治療は望まなかった。全身状態が急激に悪化しているため,処置を含め,★☆病院外科に再入院となったが,入院後ほどなく逝去されたそうである。

6月21日 6月28日 6月28日

7月5日 7月5日 8月2日

9月6日 9月6日 9月6日 9月6日

 高齢者の褥瘡でもASOの足趾壊死でも同じことが言えると感じていることだが,局所治療の方法を変えていないのに,突然,褥瘡が悪化して黒色壊死になったり,足趾指尖部が黒くなってきた場合は,全身状態が一気に悪化する前兆現象であることが多いのだ。この症例はまさにその典型だ。
 この時点では検査データなどには異常が現れることは少ないが,遅かれ早かれ,検査データ上も「全身状態の悪化」を示すようになり,全身状態は坂を転げ落ちるように悪化し,何をしても悪化は止められず,患者さんは不帰の転帰をたどることになる。
 要するに,局所治療が同じなのに,褥瘡や足趾循環が悪化するのは,局所の循環を維持するだけの「全身の余力」がなくなっているのだ。つまりそれは,「死への不可逆的変化」に患者が足を踏み入れてしまった状態なのだ。
 これまでこのような患者さんを多数見てきたが,残念ながら,外れたことはほとんどない。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0041/index.htm】

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