48歳女性。
2011年6月25日,左アキレス腱断裂。〇〇大学付属▼▼病院整形外科で手術を受けたが,7月18日に再断裂し,7月27日に腱の再縫合を行った。術後創感染を起こし,傷が開いた状態となった。感染を抑えるために,アキレス腱を切除した都のことである。
2012年1月,主治医より皮膚移植が必要と説明を受けたが説明に納得せず,◆◆大学病院整形外科を受診し,当初は「手術をしないでやってみましょう」と説明を受けた。
しかし,2012年3月に同院形成外科を紹介され,アキレス腱を再建をしなければいけないので「筋膜移植+皮弁形成(逆行性被覆動脈皮弁)」が必要,と説明された。
これ以上手術したくないため,ネットで検索して湿潤治療について知り,同年4月13日に当科初診。
当科では直ちにプラスモイスト(R)での被覆を行い,1週間でほぼ上皮化した。
4月13日 買ったばかりのデジカメだったため, 白飛びしてしまった。 いずれにしてもちっちゃな浅い傷だ。 |
4月20日 |
この方とは受診前からメールで相談を受けていて,「1年以上経過している創離開だから,さぞかしひどい状態だろう」と予想を立てていましたが,4月13日に受診された創部を見たら拍子抜けというか,笑い出してしまいました。
この方は「もうこれ以上,手術されるのは嫌だ!」と医者の提案を拒否し,必死にネット検索したから,手術もせずに1週間で呆気なく治ったわけですが,医者の説得に負けてしなくていい手術を受けている患者は多いんでしょうね。医者に「手術が必要」と言われたら,素人は反論できないもんなぁ。
ちなみに,◆◆大学形成外科では,アキレス腱の再建を「筋膜移植+逆行性腓腹動脈皮弁」の組み合わせで行おうと考えていたようだが,これは多分失敗すると思う。成功させるなら,「遊離大腿筋膜皮弁によるアキレス腱再建」だろう。つまり,大腿前面の筋膜を血管柄付きで採取し,腓腹動脈あたりと血管吻合する手術だ。これなら再建に使った筋膜の血流が十分に得られ,アキレス腱として機能する。
しかし,筋膜単体と採取して残存しているアキレス腱に縫合し,その上を有茎皮弁で覆うだけでは,移植筋膜への血流が十分ではなく,おそらく,移植筋膜は早晩,瘢痕化するか吸収されるのがオチだ。
もちろん,前者は後者より技術的難易度が高いが,大学病院形成外科なら前者の術式を患者に提案すべきだと思う。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0015/index.htm】