8歳女児。
 4月22日,母親の運転する車に乗っていて,母親が車を停車させて離れたところ,車が突然走りだし,身の危険を感じた患児が車から飛び降りたが,足が地面に接触したまま長い距離を引きずられた。直ちに〇〇医療センターに救急搬送され,整形外科入院となった。右第1中足骨骨頭内側の骨が創外に露出し,摩擦熱による皮膚軟部組織損傷が認められた。
 同科では第一中足骨開放骨折の診断で洗浄とデブリードマンを施行。術中,第1中足骨骨頭は一部欠損し,第1中足骨と基節骨間の関節は開放し,関節軟骨も損傷を受けていた。その後,創面は保存的治療で肉芽を上げた(治療の詳細は不明)
 6月27日にセカンドオピニオンで両親が当科を受診。紹介状に書かれていた問題点は次の通り。

  1. 傷が治っていないため,早期に植皮すべきだろうか
  2. 痛みがあってリハビリが進まないが
  3. 第1中足骨遠位の関節が失われているため,ここに早期に骨移植を行うべきか
  4. 第1中足骨遠位関節を,血管柄付き軟骨移植で再建すべきだろうか
 
 それに対する筆者の返書は次の通り。
  1. 皮膚欠損は湿潤治療で治り,植皮はすべきではない。
  2. 失われた関節を血管柄付き軟骨移植しようにも,周辺の組織の挫滅がひどいのでdonor arteryが見つからない可能性が高い。
  3. たとえ軟骨が生着したとしても正常な関節として成長するか不明。
  4. 痛みはソフラチュールガーゼによるものと思われる。被覆材に切り替えれば痛みがなくなればリハビリは自然に進む。
  5. 第1中足骨の遠位関節は偽関節だが,それが痛みの原因とは考えられない
  6. 偽関節による足の変形は軽度と予想される。大きな変形が生じたら,成長期以後に骨移植するか,骨切り延長術で対処できる。成長期に骨移植はしないほうがいい。
  7. 早期に退院させた方がいい。
 

8月20日:当科初診時 8月20日 9月13日
普通に走っている

10月2日
週末に行われる運動会では
リレーの選手に選ばれたそうである。
10月2日


【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/443/index.htm】

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