2歳1ヶ月女
 2020年1月5日,川崎病で〇〇病院に入院となり,点滴が始まった。1月6日,左手背の点滴漏れが見つかり,同院形成外科に紹介されて受診し,ゲーベンクリーム®が処方され,石鹸でよく洗うように指導された。1月24日,皮膚移植をしないと治らないと説明されたが,母親は直ちにネット検索し,手術を拒否して即時退院を申し出た。
 1月25日,当院を受診。左手背の2/3近い皮膚が全層壊死している状態だったため,ズイコウパッドで創部を被覆。

1月25日 1月27日 2月1日

2月8日
14日後
2月15日
21日後
2月22日
28日後

2月29日
35日後
3月14日
49日後
5月23日
119日後
ドレニゾン開始

6月20日
147日後
7月18日
175日後
10月17日
266日後

2021年3月27日
427日後



 アンケートの結果です。

  1.  子どもの点滴漏れ自体はよくあることですが、このような壊死に至るのは珍しいのでは?小児科の先生もさぞかし心を痛めたことかと思います。しかししかし、点滴漏れから3週間も経ってからの湿潤療法でここまでよくなるとは…改めて驚きしかないです。
     このチャレンジ…世界で夏井先生しかできない…でしょうね。
    【夏井コメント】
    この症例はこの病院(都内の超有名病院です)形成外科医が作ったもの,つまり「医原性皮膚壊死」です。壊死させたのは石鹸洗浄とゲーベンクリームです。

  2.  「こおりた ひろ整形形成外科」の郡田大宇です。当院でも、よく似た症例を経験致しました。その際は、夏井先生にご相談させて頂き、安心して治療することが出来ました。今更ながらですが、有難う御座いました。今後も無意味な植皮が無くなるよう、精進して参ります。

  3.  点滴漏れでこんなことになってしまうのですね、びっくりです。親御さんはよく調べて先生のところにたどり着きましたね。本当によかった。

  4.  点滴漏れの内容は、何だったのでしょうか? 私の経験では、高齢者の場合、昇圧剤だと、すぐ湿潤療法すれば、壊死させずに済むことも多いです。抗がん剤だったり、カルシウム製剤だったり、いろいろ経験しましたが、漏れに気づいたときすぐ何をしたらいいかが決め手が調べてもなかなか見つからず、結局は湿潤療法です。
    【夏井コメント】
    点滴の内容は不明です。前医からの紹介状があればわかるでしょうが,何しろ,「前医から逃げてきた」患者さんですから。

  5.  アバン・カランなどは再評価で効果なしとされ消えていきましたが、ゲーベンやエキザルベなどもワセリンと比較試験で再評価されれば消え去るものと思います。
     内科医は使用する薬の作用機序や副作用をしっかり把握して使いますが、皮膚科や形成外科の先生はそのへん気にされないのかと不思議に思っています。内科では昔理論治療という言葉が流行りましたが、要するに「なんとなく処方するな」と言うことです。理論に基づけば誰もゲーベンなんて使わなくなるはずです。
     まあ、内科医でも必須でない患者に降圧薬として利尿薬を出し、尿酸が上がったからと尿酸降下薬を出している処方などはよく見ますので、人の振り見て我が振り直せということなのでしょうが、患者さんが気の毒です。
    【夏井コメント】
    この症例の皮膚壊死は「川崎病治療薬」によるものではなく,点滴漏れが発覚した後に形成外科医が使った「石鹸洗浄とゲーベンクリーム」が原因です。石鹸洗浄とゲーベンクリームが使われなければ,ここまで重症の皮膚壊死にはならなかったと思います。要するに,これは「医原性皮膚壊死」です。

  6.  1月6日の発症時点での状態と輸液内容を知りたいです。小児の点モレは避けられないものですが、普通はこんなひどい状態にはなりません。
    【夏井コメント】
    これは点滴漏れで壊死したのではなく,形成外科医の「石鹸洗浄とゲーベンクリーム」で壊死しただけです。「ゲーベン信者の医者」が治療していなければここまで悪化することはありません。リンデロンVG軟膏あたりでも使っていれば壊死しなかったでしょう。

  7.  御家族もお子さんもぎりぎりのところでなんとか助かって良かったです。
     御家族の許可が頂けるようなら元の病院の安全管理、小児科、形成外科に写真付きで診療情報提供を頂けましたら、先方も安全配慮への僅かながらのきっかけにならないでしょうか。そのように願います。弁護士からの元の病院への問い合わせなどて、今後の同様の医原性事故を防ぐことはできないでしょうか。善意の悪は、このような事実を積み重ねることで、少しでも改善されることを願うばかりです。
     形成外科医の提案に、ぎりぎりのところで決断をされた御家族の想いに応えた夏井様、クリニックの皆様ありがとうございます。
     本日このようなサイトに訪問でき嬉しく思いました。ありがとうございました。

  8.  後医は名医
    【夏井コメント】
    後医が皮膚移植をする医者だったらどうなるか,後医がフィブラストスプレーを使う医者でも名医になるのか,ちょっと頭を使えばわかりそうなものです。この書き込みをされた人は「後医は名医」という警句を格好良く使ったつもりでしょうが,警句を無批判・無思慮に使うのは頭が悪い証拠と見做されますよ。

  9.  28日後の写真では跡が残りそうに見えないけど残ってしまうんですね.
     女の子なのに可哀想.もっと後の状態も見てみたいです.少しでも跡が消えていますように.
    【夏井コメント】
    このような「深い皮膚欠損・深い熱傷」では上皮化が完了してから1ヶ月くらいしてから傷が盛り上がってきて肥厚性瘢痕になります。特に,膝蓋部や手背のように動きの激しい部位ほど肥厚性瘢痕になります。
    この症例でも,早い時期から両親に「いずれ,傷が盛り上がってきますが,それは治療できます」と説明しています。

  10.  2歳1ヶ月の子供に点滴かい。もしかしてそれ普通のことなのか。子供はじっとしないから点滴は必要なんだってことか。胃瘻も気道切開も点滴も患者のためより看護師負担の軽減のが大きいからでないの。川崎病はメガビタミンで完治した症例があるよ。興味があるなら広島の医師に連絡してみたら。
    【夏井コメント】
    川崎病に対してどのような治療が標準的に行われているかは「川崎病 治療」でググってみればわかります。点滴治療が標準的であり,メガビタミン治療は標準治療ではありません。点滴するのは「子どもがじっとしていないから」ではなく,治療薬は経口投与できないからです。


【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/3405/index.htm】

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