75歳男性。山梨県在住。
 18年前より糖尿病で自宅近くのクリニックで内服治療中。
 1月下旬ころから左第1趾に傷ができ,次第に黒くなってきた。家族がネットで糖尿病性壊疽について調べ,当科を受診した。
 2月15日に受診。左第1趾は黒色壊死になっているが,近位部の発赤などの炎症所見はなかったため「穴あきポリ袋+紙おむつ」で創部を被覆。2月20日,自然離断に近い状態だったPIP関節を無麻酔で切断(壊死している部分での切断のため,出血はしないし,麻酔も不要)。これにより悪臭は激減した。これで痛みがなくなり,普通に歩けるようになった。3月6日に残存していた壊死組織を切除。これも無麻酔で行っている。3月29日の段階で創面の壊死組織はなくなり,かなりの部分がきれいな肉芽で覆われた。
 3月31日,夜に38度の発熱があり,4月3日に受診。断端部の循環が悪くなり(写真は撮り忘れた),足底に2ヶ所の瘻孔ができて排膿していた。足背の皮膚色も全体に暗紫色であり,ASOの急性増悪と考え,下肢切断の可能性が高いため,山梨県内の総合病院に紹介。4月4日に〇〇病院内科に入院となり,糖尿病のコントロールと血行再建術をを試みてみます,との返事を頂いたが,その後は当科へは通院されていない。

2月15日 2月20日 離断後 2月27日
3月6日 3月15日 3月22日 3月29日


 このような糖尿病性壊疽の局所治療には色々な考えがある,というか,決定版の治療法はまだ確立されていないと思う。私の治療方針は次の通り。

  1. デブリードマンは「壊死している部分」と「生きている部分」の境目で行うが,少し壊死組織が残る程度,つまり出血させない程度とする。
  2. 創部は「穴あきポリ袋+紙おむつ」で覆う。
  3. 十分なドレナージルートが得られていれば,多少壊死組織が残っていても感染することはまずない。
  4. 骨は関節部で離断する。関節軟骨を鑷子でつついてみて崩れるようであれば腐骨になっているので,腐骨部分は骨鉗子でかじり取る。
  5. 関節軟骨が露出していても,循環が良ければ肉芽で覆われ上皮化する。
 

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/329/index.htm】

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