62歳男性。慢性腎不全で人工透析中。
 4月27日にバイク転倒事故で右第4中足骨骨折,右下腿挫創を受傷。〇〇病院救急室で処置を受けて一旦帰宅したが,30日に整形外科入院となった。その後,右下腿が腫れて膿が出てきたため切開し,大きな傷になった。5月22日に▼▼病院整形外科に転院し,24日にデブリードマンを受け,その2日後にもう一度手術(詳細不明)を受けた。その後,傷が治らなくなった。
 知人から当科受診を薦められ,6月下旬に受診。当科ではプラスモイスト(R)で治療。人工透析をしつつ外来通院をするのが難しかったため,以後は自宅でドレッシング交換を続け,異常があったら受診してもらうこととした。
 以後,しばらく受診しなかったが,2年半後,別の外傷で当科を受診した。右下腿の傷は2012年7月20日ころ,自然にふさがったとの事だった。

2012年6月28日 7月10日 2015年2月10日日


 恐らくこれは,「下腿打撲後血腫⇒感染⇒皮膚壊死」で間違いないと思う。このような症例の経験があまりないと,どう治療していいか右往左往することが多いようだ。

 打撲後の血腫の多くは自然に吸収されるが,2週間経過しても吸収されずに残っている血腫は,体の部位を問わず,自然吸収されることはないと考えた方がいい。また,7〜14日目ころに血腫を感染源とする創感染(たいていは高熱を伴う)を起こすことが多く,この場合は血腫を除去しないことには感染は収まらない。

 血腫除去のタイミングだが,次のどちらかになると思う。

  • 感染を起こしたら速やかに切開して血腫除去する
  • 1週間で吸収されなければ切開して血腫除去をする
 
 ただ,受傷数日以内だと,切開・血腫除去の際に再出血することがあるので,ちょっと日にちをおいてからのほうが安全だろう。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/055/index.htm】

左側にフレームが表示されない場合は,ここをクリックしてください