【緊急】ワクチン7回採取はやめよ! 厚労省と医師会に代わっての警鐘
東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長 川口浩 (2021年03月11日 13:10)

理論上は7回分採取できるが...
 宇治徳洲会病院(京都府)がファイザーのSARS-CoV-2ワクチン(商品名コミナティ筋注)について、1バイアルからインスリン皮下注射用の針とシリンジを用いることで7回分採取できると発表した。
 これを受けて、河野太郎新型コロナウイルス感染症ワクチン接種推進担当大臣は3月9日の記者会見で、田村憲久厚生労働大臣らと協議した結論として、「理論上は7回分採取できる」ので「問題ない」「ファイザーからも容認を得ている」と発言した。
 両大臣は、皮下脂肪の厚さを計測するなど筋肉注射を可能にするための担保は必要だが「歓迎する」との姿勢を示した。

 これに対応して、テルモ社はインスリン注射器よりも針が3mm長い7回採取用特殊注射器の製造を始めている。
 コミナティ1バイアルは0.45mLの液剤であり、それを生食1.8mLで希釈して用いるため、総容量は2.25mLとなる。
 1回の注射に0.3mLを使うので、確かに「理論上は7回分採取できる」。

細い注射針で吸引するとLNPが破裂する恐れ
 しかし、本当に「問題ない」のか。
 インスリン針の太さは30 〜34ゲージ(G)で、治験に用いられた普通のワクチン針26〜27G(内径0.22〜0.24mm)よりはるかに細い。
 30〜34G針の内径は30Gで0.12mm、33Gで0.07mm、34Gは0.06mm程度である。
 コミナティのウイルスRNAを封入している脂質ナノ粒子(LNP;lipid nanoparticle)の正確な粒径は開示されていないが、がんをはじめとする多くの疾患に対するRNA治療で用いられているLNPの粒径は大きくても500nm(0.0005mm)である。
 サイズのみから単純計算すると、30〜34Gの内径でも直接LNPが破壊されることはない気がする。
 しかしながら、30Gの注射針で溶液を吸引するには相当な吸引力が必要である。内径が半分になると流速は4倍、4分の1になると16倍になる。
 コミナティのLNPは、その保存法、運搬法の厳格さから分かるように、非常に不安定で、超冷凍かつ濃縮状態においても物理的外力を加えること、すなわち揺れる、振ることさえ禁止されている。
 それが溶解・希釈後に30Gより細い注射針で吸引すると、大きな陰圧・流速によってLNPが容易に破裂する可能性が高い。
 壊れたLNPから漏れたRNAは簡単に生体内RNaseで分解され、ウイルス蛋白が合成されることはない。
 これを否定するためには、細い注射針におけるLNPの薬物動態/薬物動力学(PK/PD)および有効性に関する新たな臨床試験が必須である。
 過去に私も少しだけRNAデリバリーの基礎研究に参画していたことがある(J Am Chem Soc 2004; 126: 13612-13613)。
 当時はツベルクリン針(25〜26G)を用いて動物にLNP/mRNAを注射していたと記憶しているが、それでも十分な時間をかけて吸引して注射していた。
 そのころからLNPの脆弱性は周知されていた。

普通のワクチン針での接種を!
 そもそも、「ファイザーが容認した」ことはありえない。
 少しでも医学の素養がある医師が考えれば、世界屈指のメガファーマが治験で用いた方法と様式が全く異なる注射法をエビデンスもなく容認することなどありえないことはすぐに分かる。坐薬の経口内服を容認するようなものである。
 万が一、本当にファイザーが容認したとしても、それは1バイアルから7回分採取することのみであって、品質には言及していないのだろう。
 「既に有効性は証明されており、勝手にインスリン針で採取した日本人の有効性など興味なし」と考えているとすると、製薬企業としての姿勢を疑わざるをえない。
 「ファイザー容認」の真偽については現在、同社のメディカル・インフォメーションに問い合わせ中なので返事が来次第、紹介する。

 こんな末端の整形外科医でも分かることが、どうして「歓迎する」となるのか。田村厚労大臣は当然、厚労省スタッフと相談しただろう。
 厚労省にはLNPのPK/PDに精通している人材はいなかったのか。学会や政府対策分科会からの「指導」はなかったのか。また、医師会はどうしてこの報道に警鐘を鳴らさないのか。
 この1年間、あれほどメディアを通して「医療逼迫、医療崩壊、医療壊滅」などと国民と政府を脅迫し続けてきたではないか。
 行政にマウントを取るための「存在感アピール」の大チャンスじゃないか。
 厚労省も医師会もこの問題を看過していたとすると、彼らには国民の健康を預かる資格も能力もない。
 もし、既にインスリン注射器によって7回分採取されたワクチンの接種を受けている医療関係者がいたら、普通のワクチン針による再度の接種を受けることを強く勧める。